会長就任のご挨拶 ー 次世代へつなぐ雪工学 ー
富永 禎秀 (新潟工科大学)
Yoshihide TOMINAGA
このたび、第21期日本雪工学会会長を拝命いたしました新潟工科大学の富永禎秀です。歴代会長ならびに会員の皆様が築いてこられた本学会の伝統と実績を受け継ぎ、その発展に微力ながら尽力してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
私は新潟県魚沼市の生まれです。魚沼は国内有数の豪雪地帯として知られています。家族総出で行った屋根の雪下ろしや、雪壁に囲まれた細い通学路を歩いた日々は、雪国の暮らしの原風景として今も鮮明に記憶に残っています。雪は生活に大きな負担をもたらす一方で、人々の暮らしや地域文化を支える存在でもありました。こうした経験は、雪を単なる自然現象としてではなく、人と地域社会に深く関わる存在として捉える原点になっているように思います。
日本雪工学会は、雪に関する自然科学、工学、社会科学など幅広い分野の研究者・技術者が集い、学際的な視点から雪国の課題解決に取り組んできました。その活動は、雪害対策や利雪技術の発展のみならず、雪国の安全・安心な暮らしと地域社会の持続的な発展にも大きく貢献してきたものと考えています。
近年、雪を取り巻く環境は大きく変化しています。気候変動の影響により降雪量や積雪環境の長期的な変化が指摘される一方で、局所的かつ短期間に大量の降雪が発生する事例も各地で報告されています。これまでの経験だけでは対応が難しい雪災害が発生する可能性も高まっており、雪に関する研究や技術開発への期待はますます大きくなっています。また、こうした課題は日本だけのものではなく、世界各地の寒冷地域に共通する課題として国際的な関心も高まっています。
さらに、人口減少や高齢化の進行に伴う除雪の担い手不足、インフラの維持管理など、雪国が抱える課題はますます複雑化しています。このような状況だからこそ、多様な分野の知見を結集し、学術と実務を結び付ける日本雪工学会の役割はこれまで以上に重要になっていると考えています。
第21期においては、前期の上村会長のもとで整備された学会運営の基本方針を継承しつつ、さらに発展させていきたいと考えています。特に、次の三つを重点的に進めてまいります。
第一に、活動の対外発信の強化です。本学会には、雪に関する豊富な知見と経験が蓄積されています。それらを積極的に社会へ発信し、行政、企業、地域社会から信頼され、頼られる学会を目指してまいります。
第二に、雪工学に関する学術基盤の確立と強化です。雪工学は実践的な学問であり、多くの優れた知見が研究機関や企業、行政の現場に蓄積されています。これらを学術的なプラットフォームの上で整理・共有し、再利用可能な知識として蓄積していくことは、本学会が果たすべき重要な役割の一つです。こうした活動を通じて、日本の雪工学の存在感を高め、国際社会における認知度向上にもつなげていきたいと考えています。
第三に、次世代への知識・技術の継承です。本学会の大きな財産は、長年にわたり蓄積されてきた知識と経験です。若手研究者や技術者、学生が学会活動を通じて交流し、学び、成長できる機会を充実させることで、雪工学の発展を担う次世代の育成に努めてまいります。
日本雪工学会は、多様な専門分野の会員が集う学際的な学会です。この強みを活かしながら、雪国の安全・安心な暮らしと持続可能な地域社会の実現に貢献していきたいと考えています。
